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新種のHIVウィルス、未だ証拠見つからず
2005/08/09 19:11
エイズ活動家の医師によると、今週に入ってから薬物耐性をもつ系統のHIVウィルスの感染が3件報告された。しかし、これが新しく危険なHIVではない、と言う。
2月にニューヨークのゲイの男性がクリスタル(ドラッグの一種)を使用して、たった一ヶ月という短期間のうちに重篤なエイズを発症したということが明らかになり、小規模のパニックが起こった。
この男性患者は、現在最も一般的に使用されている4つの抗ウィルス薬のうち3つに対して抵抗力を持つウィルスが認められ、それがニューヨークの保健機関に新しいエイズ『スーパー・バグ』に対して警笛を鳴らすという事態を引き起こした。
コネチカットの権威あるエイズ専門家によると、ニューヨークの新たな52歳の男性患者が、パートナーである2月に見つかった上記の男性患者に感染させ、そのほかにも2人を同じ系統のウィルスに感染させたと述べたため、今週に入ってからこの問題が再び浮上した。
第3回エイズ社会会議のHIVの病理性と治療に関する月曜日に、コネチカット・HIV、エイズ特別対策委員会の創設者であるギャリー・ブリック博士が、独自の分析結果を発表した。
しかし、このニューヨークの52歳の患者とほかの2人の新しい感染者はエイズを発症しなかった。この事実により、ニューヨーク保健精神衛生局はこの新しくより危険なHIVウィルスの系統の存在に対して否定的な姿勢をとるようになった。
記者発表の水曜日 、ニューヨーク保健精神衛生局はブリック博士により言及された患者も含めて3人の患者は2月に明らかになった患者のウィルスと近似した系統のウィルスを持っていたと発表した。
しかし、発表によると「2月に明らかになった男性患者の感染源に関しては、わかる範囲の情報だけでは断定できない」、という。
「ブリック博士により言及された患者を含むこの3人の患者、もしくはほかの未だ診断されていない、または報告されていない感染者が感染源であるという可能性も十分ある。」と発表は続く。この調査は複雑であるため、この先感染源が特定されるかどうかはわからない。
このことに関してブリック博士の見解は聞けていない。
このブリック博士の主張と主流によるニュース報道により、ゲイの男性たちの間で再びパニックに火をつけた。しかし、ほかの保健局やHIVの専門家は更なる調査が必要だと口を揃えている。
ゲイメンズ・ヘルスクライシスのノエル・アリーシャは「われわれはこのことが人々の間でヒステリーを起こすのではないかと懸念している。」と語った。
「われわれがみなさんにお伝えしていることは、今まで知られていたものと違う可能性のあるウィルスがあり、それが実際に特殊なものなのかを判断するために、現在より多くの情報が必要であるということです。 ニューヨーク保健局は現在、薬物耐性と急速な進行ということが、1人の人に同時に起こったと言っている。 そしてそれらの要因は決して新しいものではない。」、とアリーシャはプラネット・アウトに語った。
ニューヨークに基盤を置く治療対策グループの、免疫学プロジェクトの指揮者であるリチャード・ジェフリース博士は『スーパー・ストレイン(系統)』や『スーパー・バグ』という用語自体、全く意味をなさないと述べている。
「メディアのほうがニューヨーク保健局からの情報を間違って解釈しているのだ。」と博士はプラネットアウト・ネットワークに語った。
「発表では、類似のウィルスが誰にでも同様な急速な進行を起こさせるとは言っていない。
2月に報告のあったニューヨークの男性患者の場合は、薬物耐性とほかの特性が不幸にも組み合わさり、急速進行という症状に至ったのであろう。」、と同博士は言う。
急速進行に関しては、まだ完全には解明されていないが、ジェフリース博士は患者個人個人の体質などに関係しているのではないかと考えている。「同じ特徴を示す症例がほかに見つかっていないことから、これらの患者は複数のウィルスに感染していたという可能性がある。 そして、『多重感染』が急速進行を引き起こすということは既に知れている。」
クリスタルの使用と急速進行との関係は未だ証明されていない、と博士は言う。
「今回の誤った拡大解釈は、既に苦しい目に合っている人たちを混乱させさらに負担をかける結果になっているので落胆している。」とコミュニティー・HIV/AIDS モビライゼーション・プロジェクトの理事長、ジュリー・デイビスが述べた。
「われわれは現在、殺微生物剤や事後避妊薬のような次世代のHIV予防が必要な時期に来ていて、そのための努力もしてきている。しかし、手に入るものといえば脅し作戦や『致命的な新しい系統の発見』というような誤った報道だけである。」
もしもこれらの感染例が最悪のシナリオになったとしても、『スーパー・ストレイン』がセーファーセックスをも無意味なものにすることはないだろう、と専門家は語っている。
「これらの感染が、全ての場合において防ぐことができるということがわかっています。」、とアリーシャは言う。 「われわれが今までに伝えてきたセックスをする際に注意すべきことというのは、今でも同じで効果がある。たとえ今後の調査によって『新しい系統』が実際に発見されても、セーファーセックスが感染の危険性を著しく低下させるということは変わらない。」 |