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米連邦最高裁:判事にロバーツ氏指名 保守化阻止へ、リベラル攻勢
2005/09/11 12:22
(ワシントン)ブッシュ米大統領が最高裁判事に指名したジョン・ロバーツ連邦高裁判事(50)をめぐり、米国の保守対リベラルの対立が激化しつつある。就任が確定すれば、国論が割れる重要問題で最終的な法的判断を下す最高裁判事の構成が、保守寄りに傾くとみられるからだ。
米国社会の倫理、価値観にかかわる問題について方向性を規定してきた最高裁をめぐる争いは、9月6日に始まる上院の公聴会に向けて「熱い夏」に突入する。
◇価値観決定、重要な存在
米国では、妊娠中絶や同性愛者の結婚、尊厳死など重要な社会的問題が政治的に決着がつかなかった場合、連邦最高裁に持ち込まれる事例が少なくない。
公民権運動の大きな勝利と言われる公立学校での人種差別禁止(54年)や、女性の中絶の権利の承認(73年)などの歴史的判決は、米社会の価値観を定めてきた。米アメリカン大のスティーブン・ワーミエル準教授(米憲法)は、最高裁を「最も困難な問題を解決することが求められる存在だ」と説明する。
大統領が誰を最高裁判事に指名するかは、米国民の大きな関心事だ。判事は終身職で定年がない。4年の任期を持つ大統領など政治家とは異なり、いったん就任すれば議会で弾劾されない限り、長期にわたって米国司法界を左右する存在。
レンキスト長官の在任期間はすでに33年を超え、スティーブンズ判事は29年。今月初めに辞任を表明したオコナー判事も23年間にわたって重大な判決にかかわってきた。
オコナー判事を除くと、現在の最高裁判事の構成が保守派とリベラル派で4対4ときっ抗していることも、最高裁人事が世論の関心を集める大きな要因だ。オコナー判事は中道派として数々の主要判決の行方を左右。ここ数年、中絶や同性愛問題、政教分離など価値観をめぐる判決では、オコナー判事の判断で、保守派がわずかな差で敗北する例が相次いでいた。
共和、民主両党にとっても、今回の後任人事は、政治的主張を最高裁に反映させうる数少ない機会になっている。
◇大統領、承認へ根回し
「申し分のない経歴の人物だ。速やかに承認されるべきだ」。ブッシュ大統領は7月30日、全米に向けたラジオ演説でもロバーツ判事に言及、早期承認を上院に呼びかけた。
ロバーツ判事は米ハーバード大法科大学院を79年に卒業。レンキスト長官の助手や、ホワイトハウスの法務補佐官、司法省の訟務局次長などを歴任し、03年にブッシュ大統領が連邦高裁判事に指名した。
現職の2年間に39の判決にかかわったが、中絶問題など、米社会で大きな論議になった重要案件は含まれていない。7月19日の指名発表の際にも「民主的制度の維持の重要性」について簡単に述べただけで、思想傾向をうかがわせるような発言はなかった。
司法省時代の90年代初めには、裁判の過程で女性の妊娠中絶の権利を認めた73年の連邦最高裁判決に否定的な見解を示したことがある。しかし、米政府を代表したもので個人的な意見とは断定できない。「保守であることは確かだが、どんな保守かまだ分からない」(米法律専門家)との見方が優勢だ。
上院では最近、大統領が指名した連邦高裁判事の承認が紛糾した経緯がある。ブッシュ大統領はロバーツ氏の選定にあたり、事前に民主党有力議員からも意見を聞くなど、異例の対応をとった。ロバーツ判事自身も指名直後から共和、民主両党の有力議員へのあいさつ回りを始め、承認を目指した地ならしに取りかかっている。
◇民主党「終身職、簡単に認めない」
民主党議員の多くは妊娠中絶などの重要問題に関するロバーツ判事の見解が明らかでないことから、指名承認を審議する9月の公聴会で厳しい質問を浴びせる構えだ。上院法務委員会幹部のリーヒー議員は「終身職である以上、簡単に就任を認めるわけにはいかない」と述べている。
民主党はロバーツ判事に関する政府内文書の公開を要求。ホワイトハウス側は一部応じたものの「政争の道具に使おうとしている」と民主党を批判、さや当ては激しくなっている。
しかし、民主党内にも審議・採決拒否や審議引き延ばしといった強硬手段まで使って承認を阻止しようとする動きはまだ見られない。ファインシュタイン上院議員は「今回は引き延ばしは難しい」と語った。ワーミエル準教授は「法曹分野での経歴には文句のつけようがない。民主党も厳しい闘いになるのではないか」と分析している。
こうした政党の動向を見ながら、保守、リベラルの両勢力は公聴会に向けて、世論を自らの側にひきつけようと必死だ。保守系団体の「プログレス・フォー・アメリカ」(本部・ワシントン)は独自のテレビコマーシャルを放映し、ロバーツ氏援護の論陣を展開した。一方、民主党系団体「ピープル・フォー・ジ・アメリカン・ウエー」(同ワシントン)は「タイミングを見計らって承認反対に向けたメディア戦略を展開する」と表明している。
来年は米議会の中間選挙が控える。キリスト教右派など保守勢力の強力な支援で再選を果たしたブッシュ大統領にとって、共和党支配のさらなる強化が目標だ。
米メリーランド大のマーク・グラバー教授(米政治)はロバーツ氏指名について「最高裁を保守化し、権力基盤を強化することが大統領の狙いだ」と指摘する。ロバーツ判事の就任を実現することがそのための重要なハードルとなる。(毎日新聞)
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◇米連邦最高裁の主な判決◇
年 争点 判決内容 賛成 反対
1954 人種問題 公立学校での人種差別禁止 9 対 0
1973 妊娠中絶 女性の妊娠中絶権認める 6 対 3
2000 大統領選 フロリダ州の投票再集計中止 5 対 4
(ブッシュ大統領初当選に道)
2003 人種問題 大学への人種別優先入学許容 5 対 4
2003 同性愛 同性間性交の許容 6 対 3
2005 政教分離 州裁判所の宗教的装飾禁止 5 対 4
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◇米連邦最高裁判事の構成◇
◆リベラル
スティーブンズ氏(85) リベラル(1)1975(2)29年(3)フォード (共和)
スーター氏(65) リベラル(1)1990(2)14年(3)ブッシュ父(共和)
ギンズバーグ氏(72) リベラル(1)1993(2)11年(3)クリントン(民主)
ブライヤー氏(66) リベラル(1)1994(2)11年(3)クリントン(民主)
◆中道
オコナー氏(75) 中道(1)1981(2)23年(3)レーガン(共和)
◆保守
ケネディ氏(69) 穏健保守(1)1988(2)17年(3)レーガン (共和)
レンキスト長官(80) 保守 (1)1972(2)33年(3)ニクソン (共和)
スカリア氏(69) 保守 (1)1986(2)18年(3)レーガン (共和)
トーマス氏(57) 保守 (1)1991(2)13年(3)ブッシュ父(共和)
◆(承認待ち)
ロバーツ氏(50) 保守(1)未定(2)−−(3)ブッシュ(共和)
(レンキスト氏の長官就任は86年で、レーガン大統領が指名)
※(1)は就任年、(2)は在任期間、(3)は指名大統領。
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