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ロシア 同性愛者の権利を擁護する判決
2005/10/10 14:44
(ロシア・サンクトペテルブルグ)サンクトペテルブルグの裁判所が、ゲイであることを理由に雇用を拒否することは違法であるとする判決を下した。ロシアの裁判所が同性愛者の権利を擁護する判断を下すのは初めて。
原告はVPとされる男性。VP氏は、ロシア鉄道(the Russian State Railways)への就職を希望したが、政府の軍隊記録に彼が精神障害を持っていることが記載されていたことを理由に、採用を拒否された。
VP氏は、同性愛者であることを理由に1992年、軍への入隊を拒否された。92年当時、同性愛は精神障害の一つと見なされていた。当時の政府記録と軍隊記録には、VP氏が精神障害を持っていることが記載され、また、彼が定期的な精神鑑定に出席するように要求されていたことも分かった。
現在ロシアでは、同性愛はもはや精神障害とは見なされていないが、軍はVP氏の軍隊記録の修正を拒んでいる。
VP氏が鉄道会社に就職を希望した際、‘障害'を持っていることが、彼を採用の対象外にすることの理由として用いられた。
裁判所は、「人権を制限するために軍のデータが使用されることは違法であり、VP氏に対する診断は、同氏のセクシュアリティーのみに基づいたものであるため不当である」と述べた。加えて、裁判所は、同性愛が精神障害ではないことを改めて強調した。
「サンクトペテルブルグ裁判所の今回の判決は、ロシアにおけるLGBTの人権にとって大きな一歩となった」と話すのは、LGBT市民権団体GayRussia.ru(http://www.gayrussia.ru)代表のニコライ・アレクセフ氏だ。
今回の‘ VP 判決'は、政府記録によって精神障害者だとされている同性愛者たちに、大きな影響があるとは考え難い。
ロシアの司法制度は英米法体系の国々とは異なり、先例拘束性がなく、一つの判決が、今後の同様の判決に影響を及ぼす可能性が低い。
しかし、アレクセフ氏は、他の裁判官たちがサンクトペテルブルグの出した今回の判決と、今後も同様の判断を示してくれるものと期待をしている。
「ボールはもう転がりだしたのだ。今回の判決を受けて、裁判所が同性愛者解放に乗り出してくれるはず」とアレクセフ氏は話す。
判決は、とりわけアレクセフ氏にとって重要なものだった。というのも、アレクセフ氏は今回の訴訟のほかに、ロマノーソフ・モスクワ大学に対しても、不当処分を受けたことを理由に裁判を起こしているためだ。
VP氏が大学に対して起こした訴訟は6月に一度、モスクワの地方裁判所で棄却されている。9月9日、モスクワ市裁判所は、地方裁判所の決定を支持。現在、訴訟は、ストラスブルグにある欧州人権裁判所に持ち込まれるべく準備が進められている。 |