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カナダ 同性愛者権利活動の先駆者ジョージ・ヒスロップ氏が逝去
2005/11/08 05:13
ジョージ・ヒスロップ氏−同性愛者カップルの年金受給の権利をめぐって、カナダ・ペンション・プラン(カナダの年金システム)への訴えを起こし、権利を勝ち取ったカナダ人同性愛者−が、長い闘病の末、トロント・グレイス病院で亡くなった。享年78歳。
ヒスロップ氏は、カナダで初めて同性愛者であることを公にして選挙に立った人物であり、カナダの同性愛者団体の草分け的存在の一つ「コミュニティー・ホモファイル・アソシエーション・オブ・トロント」の創設者の一人でもあった。
「ジョージは、差別と闘い、平等な尊厳を社会に要求した、同性愛者コミュニティーではリーダー的存在だった」と語るのはヒスロップ氏の弁護士ダグラス・エリオット氏だ。
「1970年初め、同性愛者であることを公にすることが、どの地域でも難しかった時代に、ジョージは、パートナーと一緒にテレビ出演したことがある。彼の持つユニークな魅力と勇気によって、ジョージは私たちの街を、私たちの国を、そして世界を変えた。私たちは、かけがえのない存在を失った」とエリオット氏は話す。
ヒスロップ氏は、ロナルド・シーアー氏とコモンローパートナーシップ(注 1 )を結んでいた。シーアー氏の死後、ヒスロップ氏はシーアー氏の加入していたカナダ・ペンション・プランに年金受給申請をしたが、申請は認められなかった。
カナダ・ペンション・プランの下では、2000年8月に法改正が行われるまで、同性愛者への年金の受給が認められていなかった。法改正後、1998年1月1日以降にコモンロー・パートナーが死亡した人については年金受給申請が認められたが、ヒスロップ氏の場合、シーアー氏が1998年1月1日以前に亡くなっていたため、年金を受けられなかった。
ヒスロップ氏はこれを不服として訴えを起こし、上訴裁判所は、カナダに住む1000人以上の同性愛者への年金支給を行うよう政府に命じる判決を下した。これに対し政府は、判決を不服として最高裁へ上告。最高裁での審理は、来年の5月に行われることになっていた。
ヒスロップ氏は、長年にわたり、ハッスル・フリー・クリニック院長とトロント調停委員会委員を務めた。1980年には、トロント市議会議員選挙に立候補。オンタリオ人権法典の人権リストに「性的指向」を盛り込む活動のリーダーだった。
集団訴訟原告団の一人であるゲイル・メレディス氏はヒスロップ氏について「我々に、平等な権利を主張することを決して止めてはならないことを示すことで、カナダを、全ての人のためによりよい地にした人物だ」と語った。
(注1):1年以上同棲し、内縁関係にある異性または同性のカップルに法的権利を認める制度。この制度の下では、パートナーのことを「コモンロー・パートナー」と称する。 |