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“テレビでゲイのキスシーン?の噂がブラジルで大反響”
2005/11/27 13:06
ブラジルのテレビはスキャンダルには馴れっこだが、金曜夜に放送がされるテレビ局グロボのドラマ“ America (アメリカ)” の最終回に二人の男性同士のキスが含まれているかもしれないということで、いつになく大きな話題となっている。ブラジル中のファンは、パワフルな牧場主の息子ジュニアが牧場の従業員の一人ゼカにキスをするところまでいくのかどうか見るのを待ちきれない、といった様子だ。もしジュニアがキスをすれば、ブラジルのテレビで放送される初めての男性同士のキスシーンとなる。
「(もしそのキスシーンが放送されれば)これはブラジルの歴史上、非常に意味のある瞬間となるでしょう。ゲイの社会運動は活発になり、人々のホモフォビア(同性愛嫌悪)に対する見解にも確かな変化がみられます。メディアがようやく追いついてきましたね」と、“ Beyond Carnival: Male Homosexuality in Twentieth-Century Brazil (カーニバルを越えて: 20 世紀のブラジルにおける男性同性愛)” の著者であるジェームズ・グリーンはアメリカ・ロードアイランド州からの電話インタビューに答えた。
1998年に放送されたドラマ“ Tower of Babel (バベルの塔)” にはレズビアンのカップルが登場したものの、“アメリカ” が放送されるまで、男性同士が関係を持つというテーマはほぼタブーとされてきた。ブラウン大学においてブラジル史とブラジル文化の教授を務めるグリーンは、もしジュニアとゼカが“アメリカ” の最終回でキスをすれば、ブラジルの国境をはるかに越えた反響があるだろう、と話す。「“ Will & Grace (ウィル&グレース)” がメキシコに影響を与えたように、ドラマの中での(ゲイの)キスシーンは南米中に影響を与えるでしょう」
グロボのドラマは翻訳され、南米中に、そしてロシアのような遠い国を含む世界中の国々に輸出されている。ロシアにおいて、グロボのドラマは非常に人気がある。グロボはそのキスシーンがあるのかどうかということを公表していないのだが、その論争はすでに視聴率を引き上げ、南米最大の国家であるブラジルでのゲイ男性の容認をめぐる多様な議論を巻き起こしている。
「“アメリカ” の最終シーンは完全に秘密です。著者のグロリア・ペレスからドラマの視聴者の皆さんへのサプライズです」とグロボのメディア対応部署はAP通信にE メールで話した。「まだそのキスシーンは確定したわけではないけれども、人々は間違いなくそのことばかり話題にしているし、それに関する議論も過熱していますね」
グロボのテレビドラマは人口1億8300万人を抱えるブラジルの国中で非常に人気があり、最も人気があったドラマの最終回は90%もの視聴率を記録したことで知られている。グロボによると、先週ペレスがそのキスシーンが予定されていると発表した際、電話とEメールが殺到し、その約53%がキスシーン反対派で47%が賛成派であったという。しかし、月曜までにはキスシーン賛成派が約80%になった、とグロボは話した。
「疑うまでもなく、人々が男性同士のキスについて話しているというその事実こそがいい方向への変化なのです」と、ゲイ人権団体アーコ・イリスの代表者ルイス・カルロス・フレイタスは話した。「この国最大のメディアグループであるグロボは、人々の意見を形づくる決定的な役割を持っています。グロボは人々の態度に強い影響を与えるのです」
グロボにとっては、論争などお手の物だ。グロボはもう長いこと1977年にブラジルにおいてやっと合法となった離婚や、未だに違法である中絶など、議論を呼びやすいテーマについての話し合いを人々に提起するためにテレビドラマを利用してきた。ブラジル司教協議会の書記長である司教ドン・オディリオ・ペドロ・シェラーは、教会はそのキスシーンについてコメントはしないと話した。
ポルトガル語を話すブラジル人は、南米のスペイン語を話す国にいる同胞よりも同性愛的行為に対して一般的により寛容である一方、ブラジルにはそれに逆行するものも根強く残っている。ブラジルの判事は、同性パートナーを持つ外国人に居住権を与え、婚姻の持つベネフィットの多くをゲイカップルにも与えるシビルユニオン法も認可したが、一方では、ブラジルにはゲイとレズビアンに対する敵意を隠さない層も存在する。リオデジャネイロにあるキャンディード・メンデス大学が行った調査は、リオデジャネイロに住むゲイ人口の60%がセクシュアリティーに起因する何らかの嫌がらせを受けた事があり、17%は肉体的暴行を受けたことがある、と明らかにした。(マイケル・アスター、AP通信) |