コラム
偏見から生まれた意見
2005/12/31 17:47
スコットランドの偉大な判事で文学批評家のフランシス・ジェフェリーがかつて、次のように述べたことがある:「偏見から生まれた意見というものはいつも、大きな暴力的なものによって支えられている」と。ジェフェリーは言語における暴力に言及したものと思われるが、彼の発言は、あらゆる世界中の暴力について真実を語っている。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの問題は、国際的レベルの議論の場の最前線にあり、LGBTに対する組織的攻撃や暴力は、急激に増加している。
今年、幾つかの国ではプライドパレードで暴力行為が見られた。7月、ラトヴィアの首都リガの行政長エリック・シュカパース氏は、同市におけるプライドパレードの中止を命令したが、裁判所は、パレード実施を許可。勇気あるたくさんのゲイやレズビアンが、性的少数者の権利獲得を訴えて市内を行進する中、自分たち以上の圧倒数の反同性愛者に遭遇。反同性愛者らは、LGBTに対して腐敗した卵を投げつけ罵声を浴びせると、警官が制止に入りながらも、暴徒と化した。
同様の光景が、その1ヶ月前のポーランドでも見られた。ワルシャワ市長がパレードとあらゆる同性愛関連の祝典禁止を決定した中、2,500人以上が同市内を行進。ここでもまた、LGBTに対して卵と罵声が浴びせられ、この時は、行進に参加していた人たちが反同性愛者たちによって攻撃された。
エルサレムのプライドパレードはもっと酷いものだった。1,000人以上の反同性愛者が尿の入ったビンや糞便の入った袋を行進していた人々に向かって投げつけたのだ。3人が、宗教原理主義者による相次ぐ攻撃で刺された。
オーストラリアでは、同性愛者の権利擁護団体ビクトリア・ゲイ・アンド・レズビアン・ライツ・ロビーが、同性愛者に対するビクトリアでの暴力行為・嫌がらせの件数が‘受け入れられないほどの高いレベル'まで増加していると報じている。
ヒューマン・ライツ・ファーストの伝えるところによると、フランスでは、同性愛者を標的にした暴力的憎悪犯罪件数が2002年から2003年の間で2倍以上になっている。
今年7月に同性結婚が合法化されたカナダでさえ、同性愛者に対する暴力件数は増加している。犯罪学者で作家のダグ・ジャノフ氏は「カナダにおける同性愛者に対する暴力は、他の犯罪被害者を標的にしたものよりも凶悪である」と話している。
残念なことに、同性愛者を標的にした犯罪の最前線はアメリカである。今年の夏は特に、LGBTコミュニティーにとっては暴力的なものとなった。7月だけで、LGBTを巻き込んだ4件の放火があった。7月9日には、ヴァージニア州ミドルブルックにあるゲイフレンドリーとして知られるユナイテッド・チャーチの礼拝堂が標的となった。犯人は火を放つ前に、礼拝堂の外壁に‘この教会のメンバーは罪人'とのメッセージを残した。それから2週間後、アーカンソー州ファイエットヴィルのゲイ・クラブが、1ヶ月弱の間に2度の放火に遭っている。ゲイ・クラブ Studio716 は、その2度目の放火により全焼。1週間後、テキサス州ブロンズヴィルのゲイ・クラブも放火に遭った。そしてその数日後、フロリダに住む同性愛者カップルが憎悪犯罪の標的となり、‘ホモ死ね'と玄関の階段にスプレー描きされ、家に火を放たれた。
今年の夏は、ニューヨーク市の同性愛者にとっても暴力的なものとなった。今年の夏の同市における同性愛者を標的とした犯罪はおよそ100件。6、7月だけでその件数は85件で、8月に入ると毎日のように事件報告が相次いだ。暴力反対プロジェクト( the Anti-Violence Project )によると、2004年の同性愛者に対する憎悪犯罪は、平均を6%上回った。
実質、同性愛者に対する暴力行為は、合衆国全体で増加傾向にある。4月に発表された全米暴力反対プロジェクト( NCAVP )の年次報告によると、2003年から2004年の間で、同性愛嫌悪暴力は4%増加。今年起きた犯罪件数も加えると、LGBTを標的にした殺人事件は11%増加している。NCACPの報告によれば、2003年のLGBT憎悪犯罪では26%の増加が見られた。
「今年の報告は、一年前の報告の追跡調査結果として見るべき」と話すのは、NCAVPの活動家で代表クラレンス・パトン氏だ。「最新の報告で、暴力に関して見ると、合衆国のLGBTコミュニティーにいる私たち全てが攻撃される可能性の下にあるという点で、近年にはなかった新しく、そしてとても危険な時代に突入したことがあまりに明らかでしょう」(パトン氏)
では、LGBTが憎悪犯罪の攻撃対象となっていることの要因は何か?まず一つとして、社会におけるLGBTが目に見える存在となったこと。暴力的攻撃は、最高裁がソドミー(反同性愛)法を違法であると判断し、マサチューセッツ州で同性結婚が法的に認められるようになった後、劇的に増加している。また、多くの州で住民が同性結婚を禁止するなどの内容を盛り込んだ憲法修正提案への働きかけをし、ブッシュ大統領が再三にわたって同性結婚を禁止する連邦憲法修正案に言及したことでも暴力件数は増加している。LGBTコミュニティーは、自分たちの存在が、2004年の選挙期間中に右派の政治家によって利用されたと見ている。
表面的に見られるよりも問題は深いと考える人もいる。同性愛者権利擁護団体ナショナル・ゲイ・アンド・レズビアン・タスク・フォース( NGLTF )は、批判の矛先を宗教団体の保守派に向ける。
「文字通り、2004年はたくさんの同性愛者が傷つき、その血が流された。これはジェリー・ファルウェル、ジェームス・ダブソン、トニー・パーキンスといった保守派の宗教指導者に責任があり、その他にも多くの人たちが、自分の地位や名誉のために同性愛者に対する憎悪を利用し、広めた」とNGLTFの代表マット・フォーマン氏は述べた。
フォーマン氏の言うことは、正しいかも知れない。
調査は、憎悪や嫌悪を利用した政治的メッセージが、直接的に同性愛者を標的とした暴力に結びついていると結論付ける。宗教指導者が、継続的に同性愛者を悪魔扱いする憎悪的演説を行うことも、同様の影響があるに違いない。ファルウェル氏、ダブソン氏、ロバーツソン氏、そしてフェルプス氏(いずれも右派宗教指導者)が同性愛者を罪人と呼ぶ度に、彼らは、多くの人が LGBT に対してすでに持っているマイナスの印象を偏見へと助長しているのである。
最近の例としては、ハリケーンカトリーナが挙げられる。自身を‘リペント・アメリカ(アメリカを悔い改める)'と呼ぶ福音教会グループは、カトリーナによる被害は同性愛者のせいであると非難する声明を発表した。「多くの人の命が奪われたのは非常に悲しいことだが、神がその行為によって、悪がはびこる街を破壊されたのだ」と教会の代表マイケル・マルカヴァージュ氏。
さて、この憎悪と暴力のサイクルは、いつになったら終わるのだろうか?それは、宗教に根ざした偏見と不寛容に、勇気ある人たちが立ち向かって闘い始める時だろう。公民権運動指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが書いたように、「私たちは、私たちの世代で、悪い人々( bad people )の憎悪に満ちた言葉や行動だけではなく、よい人( good people )が沈黙し続けることをも悔やみ、改めなければならないだろう」
行動を起こすかどうかは、我々と我々の仲間にかかっている。公正な心を持ち平等のために闘う人を政治家として選ばなければならない。全ての少数者を守り、情況を改善させようと努力する政治家を支え、励まさなければならない。偏見と差別に立ち向かい闘おうとする勇気ある宗教指導者に、拍手を送る必要がある。そして一番大切なことに、私たちは、自分たちの声を届けなければならない。正しいと信じるもののために立ち上がりなさい。沈黙する者の一部にならないで。我々は、偏見から生まれた意見に立ち向かわずにはいられない。
(文:ジョシュ・アテロヴィス) |