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「LGBT」流行先取り――ゲイなど性的マイノリティー、鋭い感性に注目
2006/04/21 23:50
■映画・ファッション界、鋭い感性に注目
同性愛者など「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティー(少数派)がマーケティングの世界で、静かに注目を集めている。社会的にはなお、差別や屈折とたたかう彼らだが、消費やエンターテインメントの現場では、鋭い感性を見せ、洗練された生活スタイルやファッションが流行をリードする。LGBTを受け入れ、彼らに学ぶ先に、思わぬ視界が開けるかもしれない。
十三日、午後六時。東京・六本木のブエナビスタインターナショナルジャパンの映写室に、オシャレにキメた二十 ― 四十代の男女約四十人が集まった。映画「RENT」の試写会だ。タワーレコード子会社のNMNL(東京・品川)が創刊したLGBT向け雑誌「yes」読者のために制作され、話題を集めた。
映画はニューヨークの片隅で暮らす貧しい芸術家や恋人たちの生きざまを描く。犯罪やエイズ、ドラッグなど若者が直面する様々な問題の中の一つとして取り上げられるのが同性愛。試写はゲイコミュニティーへ訴求しようと狙った。
■雑誌に大手広告
NMNLは独立系のゲートレコーズ(東京・渋谷)と組み、ゲイが好む音楽を集めた編集型CDを制作中。七月をメドにタワーレコードの店舗限定で発売する。毎年、四千人近くが集まるというゲイのダンスイベント「Shangri ― La@ageha」とも連動させ、音楽の新潮流につなげたいともくろむ。
音楽や映画、舞台などエンターテインメント業界やファッション、コスメティック業界がLGBT市場に注目している。「気に入ったらとことん追究し、仲間うちで批評し合うのが大好き。そんな特性を持つ彼らを取り巻く市場は大きい」(NMNLメディア事業部の望月展子部長)。「yes」四月号への広告出稿金額は創刊号(昨年十二月)の二・五倍に膨らんでいる。
リーバイ・ストラウス・ジャパンが二号連続で広告を打ったほか、化粧品輸入販売のわかば(東京・台東、稲生達彦社長)は香水「パコ・ラバンヌ」の広告を掲載。三号では「七 ― 八倍に届きそうな勢い」と話し、今後は旅行好きが多いとされるゲイにアピールしたい旅行会社や航空会社などにも広げたい考え。
渋谷のファッションビル「109」で若者向けセレクトショップを展開するワールドコンクエスト(同・渋谷、照井憲宇社長)は二月、会員登録したメンバー同士がインターネット上で交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を開いた。「八七% GAY SNS!」と歌い、アパレル事業との相乗効果を見込む。
性的マイノリティーを「多様性の一つととらえ、生きやすい社会を目指したい」と話すのは、札幌市の上田文雄市長だ。LGBTを対象に毎年開くパレード「レインボーマーチ札幌」は今年九月に第十回を数える。第一回に百八十人だったパレード参加者は昨年、五倍以上に増加。「今年はガイドブックも十四万部を作成、千二百人の大パレードを目指したい」(実行委員会)と意気込む。
■企業内で戦力化
LGBTをむしろ企業の内で戦力にしよう、という動きもある。大手証券会社のリーマン・ブラザーズ証券(東京・港)は三月から、早稲田大学など七大学のLGBTサークルに声を掛け、ゲイとレズビアンに向けた社内の支援システムをアピール、優秀な人材の確保に乗り出している。「多様な人材を抱えることができれば顧客提案の幅も広がる」との考えだ。
参加した早大のLGBTサークルGLOWのメンバーは「こんな企業があるとは」と驚きを隠さない。とはいえ、社会的にはまだまだ少数派で、悩みも多い。「同性パートナーと住める賃貸住宅や、将来は保険商品、医療分野などの新商品を期待したい」(GLOWメンバー)と話しており、こんなところにも市場開拓の余地はある。
▼ LGBT レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害者)の略称で、性的少数者の総称。米国同様に日本でも「総じて可処分所得が多く、流行感度の高い消費者」として注目されつつある。統計値はないが、「潜在的に人口(十五歳以上)の一〇%前後とみている」(「yes」編集部)。
LGBT関連市場を、多様性の意味を込め「レインボー市場」とも言う。米大手調査会社、ウィテック・コームズ・コミュニケーションズの推計では二〇〇五年の米国レインボー市場は約七十五兆円。毎年二ケタ前後の伸びという。ファッションや宝飾、高級自動車メーカーがこぞって広告を打つほか、ホテルや航空会社の中にはゲイ向けの商品も開発している。
日本国内市場は「米国との総人口比やGDP比から見て、七兆円前後はあるのでは」(「yes」編集部)とみられる。
■「LGBT」流行先取り ―― 電通消費者研究室四元正弘氏、自己研さん意欲強く
電通消費者研究室の四元正弘プランニング・ディレクターの話。
一般に、流行感度が高いといわれるゲイが注目される背景には、昨今のマーケティング戦略の変化が垣間見える。消費が成熟化し、多くの商品はもはや機能的な特徴で売ることが難しくなった。逆に感性的な部分でいかに訴えるかに、売り手の主眼が移っているためだ。
米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」が好例。ダイヤルは機械操作というより人間の肌をやさしく触る感覚に似ている。設計者はもとより、この感覚を楽しめるのも感性の高い人だ。
ゲイは恋愛において、時にライバルになる女性に負けないためにも自己を磨きたいという意識が強い。肉体的に鍛えようとジムに通う人が多いのもそのためだが、最新のファッションや話題に敏感でありたいという努力を惜しまないため、人的ネットワークも豊富だ。
その点では、若さでは二十代には勝てないと考える三十代独身女性のメンタリティーと似ている。二十代を想定して作られるメーカー主導のファッションセンスではなく、「自分のセンス」を大切にし、高級ブランドもさりげなく取り入れたりするテクニックを自然と身に付けるのだ。
社会的にも「受け入れ」への機運は高まりつつある。同性愛者ではないが、女性的な消費スタイルを持つ男性「メトロセクシュアル」が米国に続いて日本でも話題になったように、「多様な性」に対する排除感は弱まっている。受け入れの輪がビジネスから先に、どう広がるかがカギだ。
■「LGBT」流行先取り ―― 消費の傾向、違いくっきり、雑誌が1200人アンケート
趣味を重んじた生活や友人・恋人を大切にし、ショッピング好きで健康にも関心が高く、環境や公共マナーへの意識も強い ―― 。「yes」編集部が約千二百人を対象に行ったアンケート結果で明らかになった、LGBTの消費性向だ。
■ フィットネス好き 「フィットネスクラブ利用率は、ゲイ三六・八%、レズビアン一四・一%、男性ヘテロセクシュアル(異性愛者)五・九%、女性ヘテロ一三・二%」
(証言1)都内でマスコミ関連企業に勤めるゲイのマルガリータさん(仮名、30)は、スポーツ選手や芸能人からも支持を集める人気のジム「トータル・ワークアウト」に通い始めて二年。仕事帰りなどに週二、三回は顔を出す。個人トレーナー付きのため月額利用料は約七万円と通常のジムの六倍以上だが「自分の体に投資している」(マルガリータさん)と満足げ。
■ ショッピング好き 「ゲイ六三・九%、レズビアン五八・八%、男性ヘテロ四八・二%、女性ヘテロ六八・六%」
(証言2)「イセコ(伊勢丹)の外観イルミネーションを見ると妙に落ち着くの」。外資系メーカーに勤務するキースさん(同、41)は大の伊勢丹メンズ館ファン。この日もドルチェ&ガッバーナでクマのワンポイント付き袖付きシャツ(二万八千円)を購入。新宿駅前の「フラッグス」にもよく出かけ、衣料品やCDなどを買い求める。
■ 友人・交際を大切に 「ゲイ八二・二%、レズビアン八四%、男性ヘテロ七〇・六%、女性ヘテロ八四・一%」
(証言3)「今夜は友人のモクちゃんがニチョ(新宿二丁目)のクラブでDJするから行かなきゃ」。マルガリータさんは深夜一時過ぎ、友達のコウちゃんと一緒に三軒目のクラブへと姿を消した。モクちゃんは昼は医療関係の専門職に従事し、週末の夜はステージをこなす人気者だという。
■ 一年に一回以上の海外旅行は欠かせない 「ゲイ五〇・四%、レズビアン四四・八%、男性ヘテロ三三%、女性ヘテロ五四・三%」
(証言4)カウボーイ同士の悲恋を描いた映画「ブロークバック・マウンテン」の舞台となった米ワイオミングにゲイカップルが押し寄せている。地元自治体や観光関連業者が彼らを歓迎するとインターネット上で全世界に呼びかけている。「夏は絶対ワイオミングよね」とマルガリータさんやキースさんは話す。
「yes」編集部アンケート対象は千百六十七人。ゲイ四百二十一人、レズビアン三百六十二人のほか、男性ヘテロ八十五人、女性ヘテロ二百五十八人。(日経流通新聞MJ)
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