ニュース
【IDAHO特集(3)】学校でホモフォビア・トランスフォビアに取り組む―ある小学校教員の話
2009/05/17 05:00
私は1988年に小学校1年生の担任として働き出しました。当時、生徒の口から同性愛やトランスジェンダーに関する単語を聞くことは、めったにありませんでした。
しかし勤務し始めて数ヵ月後から、適切であるか不適切であるかに関わらず、生徒から同性愛に関する発言を耳にするようになりました。
当時、自習の時間に、教室の後ろの方から「ホモ」という言葉が聞こえたのを覚えています。私は、何を話しているのかと思い、声の聞こえた方へ歩いてきました。すると、生徒のケリーが、「お父さんにハグをするのはホモだって、ジョーダンに言われた…」と泣きながら話してくれました。
私は、「そんなことはないわ」と言い、その場を立ち去ろうとしました。すると、ケリーが、「“ホモ”っていうのは、悪い言葉なんだ」と語気を強めました。すると、そばにいたジョーダンは、「そんなはずないって。もしそうなら、ホルヴィッツ先生だって、僕たちに向かってそのとき何か言ったはずだよ」と言ったのです。
このような会話は、どこでも起こり得る会話でしょう。
「ホモ」や「オカマ」などの差別的な単語は教室、廊下、校庭などで子どもたちが誰かの悪口を言ったり、いじめに関わるときに使う言葉ですが、困ったことは、このような言葉を耳にしたとき、どのように生徒に向き合ったらいいのか分からないという教員が多いことです。
教員というものは、1分間にいくつもの事柄について判断をしなければならないことがあります。私たちは、これまでの「経験の箱」をもとに、このような判断を下すことになります。
例えば、生徒が人種差別的中傷をしたとき、たいていの教員は、どのように生徒を指導すべきかが分かっています。しかし、同性愛や同性愛者、トランスジェンダーの人への差別的な表現があったときには、不快な話題だと感じる教員が少ないために、事態を無視し、生徒に対して即座に適切な指導をすることができない教員も存在します。
このようなとき、すぐに生徒に対して指導ができるようになるためには、同性愛や同性愛者、トランスジェンダーの人に関する話題について話し合うことに抵抗がないように、学び、慣れておくことが大切でしょう。
小学校では、子どもたちが「ホモ」や「オカマ」という言葉を、よく侮蔑的な意味合いを込めて使うことがあります。自習室でのケースは、「ホモ」という表現が明らかに不適切に使われたよい例でしょう。このような場合、生徒の年齢に応じて、適切な指導をすることが大切です。
例えば、「その絵、超ホモっぽい」といった表現。このような言葉を耳にしたときには、以下のように、生徒が実際に何を言いたかったのかはっきりさせることが大切です。
教員:この絵が「ホモっぽい」って、具体的にどういう意味で言ったのかな?
生徒:分かりません。
教員:この絵をホモっぽいって呼ぶのは、この絵に好きなこと、もしかしたら反対に、嫌いなことがあるからかしら?
生徒:この絵、変だと思うんです。
教員:それじゃあ、どうして「この絵は変だ」と言わずに「ホモっぽい」って言ったのかな?
生徒:分かりません。
さて、このとき、教員は以下のような確認を行うことが重要です。
教員:「ホモ」という言葉は、特定の人たちを指した、ときには軽蔑的な意味を込めた言葉なのですよ(生徒の年齢によっては、もう少し説明を加える)。あなたがその人たちことを「変だ」という意味で使ったとその人たちが知ったら、きっと悲しい思いをすると思うよ。それに、誰かがあなたの名前を「変だ」という意味で使ったら、どう思う?例えば、(生徒の名前がジェーンだとして)「あの絵、超ジェーンっぽい」って言ったら?
低学年の生徒には、同性愛者やトランスジェンダーの人を明らかに差別した言葉を使う子もいます。そのような言葉が使われた場合には、他の差別的な言葉が使われた場合と同様に、以下の3ステップで、生徒の発言をしっかりと糾す(ただす)必要があります。
ステップ1:明確な指摘―「それは、同性愛者(やトランスジェンダーの人)に対する差別用語なのですよ」(生徒の年齢により、違った表現で伝えてもよい)
ステップ2:明確な主張―「そのような人の尊厳を軽視するような差別的な言葉を学校で使うことは許されません」
ステップ3:明確な指示―「そのような言葉は、二度と口にしないでくださいね」
私が教師として働き始めたときに比べれば、時代は変わりました。生徒たちは、同性愛やトランスジェンダーの人や関連する話題についてより語りやすくなった社会を映し出しています。メディアでも、ポジティヴな同性愛者やトランスジェンダーのロールモデルがとり上げられるようになってきました。
私たちは教員として、この分野における生徒の気付きを向上させる必要があります。そのためにも、私たち教員は、生徒への適切な指導ができるように「経験の箱」をふくらませていく必要があります。(翻訳 夏目絢)
【参照】
ゲイ・レズビアン・ストレート教育ネットワーク ホームページ(英語)
|