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【IDAHO特集(1)】世界反ホモフォビア・トランスフォビア・デーに寄せて
2009/05/17 06:00
世界には、同性愛を違法とする国が86ヶ国あります(2008年、ILGA調べ)。違法としていなくてもLGBTパレードが公権力や宗教原理主義派の市民によって妨害されたり、LGBTが恣意的拘束や殺害の標的になったり、政治的・社会的・宗教的指導者による暴力的な発言の対象となるような、ホモフォビア(同性愛嫌悪)やトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)が明確に表現されている国もあります。日本では、このような国に比べると顕著なこれらのフォビアは見られないと言えるかも知れませんが、同性愛者を標的とした恐喝、学校での「ホモ」「レズ」「オカマ」と言った言葉によるいじめ、性別表現を理由としたトランスジェンダーの人の採用拒否や解雇、メディアにおいて性的マイノリティが「笑い」の的とされるなど、依然として根強いホモフォビアやトランスフォビアがあります。
しかし、近年では日本を含むさまざまな国でより多くの人がホモフォビアやトランスフォビアに気付き、取り組みを始めています。長年にわたりこれらの言葉が存在しなかったのは、これまで“異常”だと考えられていた性的指向や性自認、性別表現に対して、それが決して異常ではないことを認めようとしなかった社会状況が反映していると考えられています。
ゲイジャパンニュースは昨年、日本のLGBTの置かれた法的・社会的現状をより多くの人に知ってもらい、改善につなげたいと、国内のLGBT関連団体や個人、ILGAやインターナショナル・ゲイ・アンド・レズビアン・ヒューマン・ライツ・コミッション(IGLHRC)などの国際人権NGOの協力を得て、国連に2つのNGOレポートを提出しました。(関連記事)
また、昨年12月には、日本を含む世界5大陸66カ国の政府が、ホモフォビアやトランスフォビアの現れであるLGBTに対する人権侵害を非難する声明を国連総会に提出しました。(関連記事)
ホモフォビアやトランスフォビアは個人や社会の偏見に基づくものです。それは同性愛者やトランスジェンダーの人に対する敵対的感情や社会的排除につながり、さまざまな側面に影響を与えます。性差別、女性嫌悪、人種差別など、偏見や嫌悪に基づくさまざまな集団に対する態度についてと同じく、ホモフォビアやトランスフォビアが正当化されるべき理由はありません。
ホモフォビアやトランスフォビアは、個人や社会が、他者との違いを理解することができないことから生じています。他者との違いは、個人や社会全体への脅威だとみなされることがあります。世俗的・宗教的な運動の中には、LGBTの人たちの法的・社会的承認が、社会の存続を危機に陥れるものだと主張するものさえあります。ホモフォビアやトランスフォビアは、LGBTである人たちの性的指向や性自認、性別表現が異常であり、周縁的であり、劣ったものであるという前提に拠っています。
「世界反ホモフォビア・トランスフォビア・デー(International Day against Homophobia and Transphobia Day)」(旧称:世界反ホモフォビア・デー(International Day against Homophobia Day))の5月17日は、1990年のその日にWHO(世界保健機構)が国際障害疾病分類リスト(ICD-10)から「同性愛」を削除することを決定した日です。この日を記念して、毎年5月17日に世界各地に根強く残るホモフォビアについて考え、何らかのアクションを起こそうと、フランスのLGBT活動家ルイ・ジョージ・タンさんの呼びかけで始まりました。
日本では、東京プライド、札幌レインボーマーチ、尾辻かな子大阪府議会議員(当時)とゲイジャパンニュースの呼びかけにより、2006年からIDAHOに合わせた取り組みが始まりました。今年は、やっぱ愛ダホ!Idaho-Netの呼びかけで、「多様な性にYES!」というテーマで、札幌、仙台、東京、大阪、福岡など全国11ヶ所でストリート・アクションが行われます。ゲイジャパンニュースでは、IDAHOに合わせ、特集記事をお届けいたします。
IDAHO特集:学校でホモフォビア・トランスフォビアに取り組む―ある小学校教員の話
IDAHO特集:ホモフォビア・トランスフォビアについて知る
【参照】
世界反ホモフォビア・トランスフォビア・デー ホームページ(英語・フランス語)
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